『インバル&都響 クック版 マーラー交響曲第10番 CD評』 マーラー:交響曲第10番(デリック・クック補筆による、草稿に基づく演奏用ヴァージョン)【インバル(エリアフ),東京都交響楽団】[OVCL-00520] conditioさんのレビュー・評価

ホーム > マーラー:交響曲第10番(デリック・クック補筆による、草稿に基づく演奏用ヴァージョン)【インバル(エリアフ),東京都交響楽団】[OVCL-00520] のレビュー・評価
マーラー:交響曲第10番(デリック・クック補筆による、草稿に基づく演奏用ヴァージョン)【インバル(エリアフ),東京都交響楽団】[OVCL-00520]

conditioさん

  • レビュー投稿数:2件
  • 累計支持数:1人
  • ファン数:0人

よく投稿するカテゴリ

デジタルカメラ
1件
0件
もっと見る
満足度 5
インバル&都響 クック版 マーラー交響曲第10番 CD評

◇ヴィオラのユニゾンは、募るマーラーの猜疑心。グロピウスの甘い誘惑は、チェロの独奏で。問い質すマーラーは、独奏ヴィオラ。コンマス奏でる独奏ヴァイオリンは、言い訳するアルマか。◇何という造形!微塵の曖昧さもなく、ギリシア彫刻の女神のように、「究極の美」が顕現。再現芸術で可能な「最終形」が立ち現れた!◇永遠に女性的なるもの、我らを曳きて昇らしむる。マーラーもまた、永遠の女性、アルマ・シントラーに曳きずり廻された、哀しき男(ひと)であった。◇クラシック音楽の黄昏と、12音、現代音楽の間に、どっちつかずで、行ったり来たり。フィナーレは、明らかにメロドラマなのだけれど、よくぞここまでの域に到達したこの演奏下では、映画音楽の趣など全くなし。透徹、卓越の演奏による昇華と言うべきか。リストの「ファウスト交響曲」に、シュトラウスの「家庭交響曲」。マーラーの10番は「アルマ交響曲」と呼ぶに相応しい。メロドラマ(音楽劇)は、純粋な「音の上下運動」を意味する古代ギリシア語の「メロス」に由来する。マーラー10番、フィナーレ、マーラー自身、最期の一息であるかのような、弦楽器13度跳躍のグリッサンドで上昇、緩やかに7度下降し、劇的に終結する。◇果たして、オーケストラが、これほどまでに美しい音楽を奏でたことが、嘗てあっただろうか?◇自由自在・融通無碍の境涯に達したインバルの指揮に、プラチナ・シルバーの光沢を湛えた、純粋・透明、硬質なヴァイオリンが、終始、高音域を貫いて、ブリリアントな(インバル)、輝かしいマーラー節で応える。マーラー最晩年の心象風景を、見事に描き切ったヴィオラ。時に甘く囁き、時に優しく語りかけ、時に轟々と雄叫びを上げる低弦。随所で、さりげなく、美しい独奏を聴かせてくれた木管。インバルが11音だという、あの不協和音さえ、濁りなく、重層的に、響き渡らせた金管。バスドラムも最高だった。透明にして濃密、正真正銘の、インバル・サウンドが、繰り広げられる。息を呑む美しさに時が止まる◇このディスクは、東京都交響楽団、TMSO、自家薬籠中の「マーラー表現法のパレット」 (インバル)によって、「混沌から最も繊細な表現に至るまで」 (同)、完璧に再現された、マーラー未完の交響曲第10番クック版、厳密には、「デリック・クック補筆による、草稿に基づく演奏用ヴァージョン」5楽章、全曲演奏のレコードである。本ツィクルス、前作の9番と、この10番とを、連続して再生してみるとよい。この10番が、いかに出色、特別か、自ずから顕かとなるだろう。◇この10番のディスクは、再生装置を選ばない。どのような聴き方をしても、ホールで聴く、実演奏の響きと、雰囲気を、そのままに再現してくれる。これほどの録音もまた、未だ嘗てなかった。但し、「ライブ収録」とは、記載されていないように、本ツィクルス9番までと同様、2014年7月20日 、21日両日の、サントリーホール・マチネーも含め、複数のテイクを編集したレコード、当日の演奏会とは必ずしも一致しない「録音芸術」と見做すのが、妥当だろう。しかしながら、同じホールを、2日続きで使ったメリットが、最大限に活かされた結果だ。事実、この10番以外は、2つ、もしくは、3つの演奏会場で収録されていた。◇日本経済新聞、池上輝彦氏は、このインバル&都響の演奏会を通じて、マーラーの交響曲第10番を「マーラーの最高傑作」 と位置付けた。これまでにも、マーラー自身の手で完成されていたら 、「最高傑作となっていたであろう」という評価は、見受けられた。しかしながら、「交響曲第10番はマーラーの最高傑作」という評価は、インバル&都響の演奏によって、おそらく、今回、初めて、もたらされたものだろう。これは、それほどに、画期的・記念碑的な演奏だったのだ!◇インバルのマーラーを初めて聴いて30年。この東京都交響楽団との、クック版、マーラー交響曲第10番の全曲演奏は、間違いなく、インバルのベスト・レコード、インバルの代表作である。◇マーラー演奏の到達点として、オーケストラ演奏の到達点として、世界中の音楽愛好家に聴いてもらいたい演奏である。◇果たして、マーラーがこの演奏を聴いて、「オーケストレーションが薄いので改訂しよう」と考えるだろうか?

参考になった0人 (再レビュー後:0人)

このレビューは参考になりましたか?参考になった

  • Twitterにツイートする
この製品および関連製品の取扱店舗を探す
満足度5
インバル&都響 クック版 マーラー交響曲第10番 CD評

◇ヴィオラのユニゾンは、募るマーラーの猜疑心。グロピウスの甘い誘惑は、チェロの独奏で。問い質すマーラーは、独奏ヴィオラ。コンマス奏でる独奏ヴァイオリンは、言い訳するアルマか。◇何という造形!微塵の曖昧さもなく、ギリシア彫刻の女神のように、「究極の美」が顕現。再現芸術で可能な「最終形」が立ち現れた!◇永遠に女性的なるもの、我らを曳きて昇らしむる。マーラーもまた、永遠の女性、アルマ・シントラーに曳きずり廻された、哀しき男(ひと)であった。◇クラシック音楽の黄昏と、12音、現代音楽の間に、どっちつかずで、行ったり来たり。フィナーレは、明らかにメロドラマなのだけれど、よくぞここまでの域に到達したこの演奏下では、映画音楽の趣など全くなし。透徹、卓越の演奏による昇華と言うべきか。リストの「ファウスト交響曲」に、シュトラウスの「家庭交響曲」。マーラーの10番は「アルマ交響曲」と呼ぶに相応しい。メロドラマ(音楽劇)は、純粋な「音の上下運動」を意味する古代ギリシア語の「メロス」に由来する。マーラー10番、フィナーレ、マーラー自身、最期の一息であるかのような、弦楽器13度跳躍のグリッサンドで上昇、緩やかに7度下降し、劇的に終結する。◇果たして、オーケストラが、これほどまでに美しい音楽を奏でたことが、嘗てあっただろうか?◇自由自在・融通無碍の境涯に達したインバルの指揮に、プラチナ・シルバーの光沢を湛えた、純粋・透明、硬質なヴァイオリンが、終始、高音域を貫いて、ブリリアントな(インバル)、輝かしいマーラー節で応える。マーラー最晩年の心象風景を、見事に描き切ったヴィオラ。時に甘く囁き、時に優しく語りかけ、時に轟々と雄叫びを上げる低弦。随所で、さりげなく、美しい独奏を聴かせてくれた木管。インバルが11音だという、あの不協和音さえ、濁りなく、重層的に、響き渡らせた金管。バスドラムも最高だった。透明にして濃密、正真正銘の、インバル・サウンドが、繰り広げられる。◇このディスクは、東京都交響楽団、TMSO、自家薬籠中の「マーラー表現法のパレット」 (インバル)によって、「混沌から最も繊細な表現に至るまで」 (同)、完璧に再現された、マーラー未完の交響曲第10番クック版、厳密には、「デリック・クック補筆による、草稿に基づく演奏用ヴァージョン」5楽章、全曲演奏のレコードである。本ツィクルス、前作の9番と、この10番とを、連続して再生してみるとよい。この10番が、いかに出色、特別か、自ずから顕かとなるだろう。◇この10番のディスクは、再生装置を選ばない。どのような聴き方をしても、ホールで聴く、実演奏の響きと、雰囲気を、そのままに再現してくれる。これほどの録音もまた、未だ嘗てなかった。但し、「ライブ収録」とは、記載されていないように、本ツィクルス9番までと同様、2014年7月20日 、21日両日の、サントリーホール・マチネーも含め、複数のテイクを編集したレコード、当日の演奏会とは必ずしも一致しない「録音芸術」と見做すのが、妥当だろう。しかしながら、同じホールを、2日続きで使ったメリットが、最大限に活かされた結果だ。事実、この10番以外は、2つ、もしくは、3つの演奏会場で収録されていた。◇日本経済新聞、池上輝彦氏は、このインバル&都響の演奏会を通じて、マーラーの交響曲第10番を「マーラーの最高傑作」 と位置付けた。これまでにも、マーラー自身の手で完成されていたら 、「最高傑作となっていたであろう」という評価は、見受けられた。しかしながら、「交響曲第10番はマーラーの最高傑作」という評価は、インバル&都響の演奏によって、おそらく、今回、初めて、もたらされたものだろう。これは、それほどに、画期的・記念碑的な演奏だったのだ!◇インバルのマーラーを初めて聴いて30年。この東京都交響楽団との、クック版、マーラー交響曲第10番の全曲演奏は、間違いなく、インバルのベスト・レコード、インバルの代表作である。◇マーラー演奏の到達点として、オーケストラ演奏の到達点として、世界中の音楽愛好家に聴いてもらいたい演奏である。◇果たして、マーラーがこの演奏を聴いて、「オーケストレーションが薄いので改訂しよう」と考えるだろうか?

参考になった0

動画付きユーザーレビュー
ユーザーレビュートピックス
ユーザーレビューランキング

(すべてのカテゴリ)

ご注意