ペンタックス FA31mmF1.8AL Limited blackfacesheepさんのレビュー・評価

[blackfacesheep]

2008年9月1日 10:26 [155670-1]

満足度	5

操作性	5
表現力	5
携帯性	4
機能性	5

FA31mmF1.8AL Limitedのレビュー

豊田市花遊庭にて	蓼科高原EXIVにて	名古屋市東区　my Styleにて
豊田市宮口町にて	恵那市岩村町にて	名古屋市昭和区　八事興正寺にて

一言で言えば、「高いけど、それ以上のことはあるレンズ」です。
柔らかさとシャープさが同居しているレンズで、そのボケ足の美しさ、端正で精緻な描写は、このレンズならではのものです。

描写は開放から十分シャープです。F4まで絞ると、周辺でさえほとんど流れず、破綻のない正確な描写です。にもかかわらず、ドライなシャープさではなく、うるおいのあるシャープさ、瑞々しさを感じるシャープさです。

またボケはこのレンズの存在意義そのものです。ボケそのものの形も素晴らしいのですが、ボケ初めからボケに至るまでのボケ足の美しさは特筆モノで、それこそ「バターが溶けるような」滑らかなボケ足です。

また、階調表現が素晴らしく滑らかです。デジタルでモノクロを撮ると、粒状の細かいフィルムを使ったような、「ぬめるような階調」が出てきて驚かされます。カラーでも同様で、落ち着いた品の良いカラー階調で再現をしてくれるレンズだと思います。

設計が古いので、最新式のデジタル専用レンズに比べれば、パープルフリンジなどもそれなり出ますし、甘さもあるのですが、それがこのFA31mmの場合は味わいになってしまいます。

また、製品のつくりも素晴らしいです。ガタも緩みもありません。
私はシルバーを選びましたが、梨地で丁寧に仕上げられた鏡胴は、昔の銘玉レンズと同様に、見ているだけで満足感に浸れます。
カメラに装着して左手でこの鏡胴を保持したときに感じる、ひんやりとした金属の冷たさは、プラスチックの鏡胴では絶対に味わえない緊張感を与えてくれます。

MFで使うときのピント･リングの精緻な触感も大好きです。精密機械をコントロールしている実感に浸れます。

組み込みフードは、サイズが十分でなく逆光には不利ですが、それでも鏡胴と一体化された無駄のないデザインを見ると許せてしまいます。
またキャップも重みのある金属製で、丁寧に作られた逸品です。しかもキャップの裏にまで丁寧に植毛されており、写りにはまったく関係ないにもかかわらず、所有の満足感を与えてくれます。

AFで使っても、単焦点ゆえに気持ちが良いぐらいシャープに決まります。合焦スピードは速くありませんが、正確さはまったく問題ありません。

このレンズが使いたいがために、カメラ本体はK20DにせずにK200Dで我慢し、予算をこのレンズに回しました。この選択は正解だったと思います。
ボケの中から浮き上がってくるような精妙な描写を見るたびに、「このレンズを買ってよかった！」とつくづく思います。

現代的な経済効率重視のレンズが多い中で、こういうコストを度外視した趣味性が高いレンズはなかなか売れないと思います。
でも、設計者や製作した職人のスピリットまで感じさせてくれる稀有なレンズです。「良い写真を撮りたい・・・」と思う方には、ぜひお勧めしたいレンズです。